みそひともじ千鳥足
かぎりある命のかぎり蝉時雨
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有為も良し無為も亦良し鰻の湯
常々「鰻温泉」に行ってみたいと思っていた。噂に「いいお湯だ」と聞いていたのである。地図を見ると薩摩半島の池田湖の側に鰻池という豆粒ほどの湖沼が載っている。そのほとりに温泉保養地があるのだろうと思っていた。しかしさほど遠い処ではないので、いつでも行けるという思いが先にたち訪れる機会がなかった。
昨日ようやくその気になり、家人と連れ立って出かけた。指宿から右に折れ野山を縫うこと10分、峠を越えると眼下に静まる結構大きな湖が目に入った。周囲を山に囲まれた、これは恐らく火口湖だろう。湖岸を走ってほどなく着いたところは小さな集落である。温泉郷などというものではない。とまどいながら中に入ってみると二、三、温泉の看板がある。集落中央の掲示板によると戸数53戸とか。ところどころに噴気口があるようで、あちこちで白い煙があがっている。集落全体が静まり返って、訪れる人など皆目ないようである。
「区営温泉、湯料200円」に魅かれて、手拭と石鹸だけ下げて入浴した。あちこち温泉には行っているが、こんな小さな鄙びた温泉は初めてである。ただ湯量は豊富で掛け流し、掛け値なしの極楽湯であった。
区が何を指すのかがわからない。小学校区とか中学校区が一般的だが、53戸で小学校が成り立つわけがないから、字区か大字区なのだろう。集落営なのだ。こういう場合、地元民は無料ということが多いが案内板にそういう記述はなかった。訪れる人が少ないから維持管理も大変だろうと納得した。
ところで脱衣所で読んだところでは、参議を辞職して鹿児島に隠棲した西郷隆盛がここを訪れている。10日ほど滞留し湯に浸かりウサギを狩った。その西郷を追ってひっそりと訪れた客が一人、佐賀の乱の首謀者江藤新平である。時に乱は鎮圧され江藤は追われる身である。江藤は「共に立つこと」を西郷に懇願し、西郷が動かぬことを知って絶望した。この辺のところは、司馬遼太郎「跳ぶが如く」に詳しい。おそらくは司馬もここを訪れて取材している。
この時西郷は、自分が反乱軍を率いることになろうとは夢にも思っていない。江藤が捕縛され即刻処刑された時どのような思いが去来したであろうか。
歴史は皮肉である。
【2007/12/10 21:14】
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