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還暦いよいよ下り坂
かぎりある命のかぎり蝉時雨
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年忘れかくて今年も終はりけり

夜中に目覚めてトイレに走ったが間に合わなかった。次の間で噴き出し、台所で盛大に下呂ってしまった。今年二度目の大出血、この歳で嘔吐するほど飲むとは情けない。
もともと止まらない性質である。日頃は周りの目もあり自制心も働くから缶ビール2本程度で済んでいるが、忘年会となると話は別だ。あまり注いだり注がれたりは好きではない。さらに飲むと気が大きくなり「馬鹿か、こいつ等」などと思うから、人に話を合わせるということができない。だから至極当然に話の輪からはずれる。末席で黙々と飲んでいる。
2年前に心臓の風船治療をした。それまでは一定量越えると胸が痛くなりそれ以上は飲めなかった。今はその限界が消滅した。良かったのか悪かったのか…。今日はその後片付けに忙しい。自分のしでかしたこと家人に頼むわけにもいくまい。
だんだん、人間が丸くなってきたとは思うのだが、反面でいじけてきたようにも思う。往年の覇気はない。どこか場末の小汚い食堂の片隅でみすぼらしい格好でちびりちびりやりたいなどと考えるのは多少のMか? 
「こいつ、帰る家もないのか?」
「一緒に飲む仲間もおらんのか?」
「貧乏臭い。ちびちび舐めやがって」
そういう同情と憐憫を一身に集めて、居心地悪く飲む。そして薄汚れた外套のポケットから百円玉と十円玉を取り出してカウンターに数えて置き、すごすごと当てもなく夜の寒風に身を晒す。ああ、たまらない。想像するとぞくぞくするなぁ。
サド侯爵ならぬマゾ男爵とは私のことだ。

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